〈蛮族の王〉への視線―『ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン』をめぐって―

①征服者と蛮族の王

「俺は一体、お前をどうしたらいいんだ?」

 (『ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン』ピーター・シェーファー/伊丹十三訳 劇書房刊 以下引用文は同書より)

 …さて、『ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン』の中では、すでに初老にさしかかっているピサロがペルーへ行くのは名誉を手に入れるためです。

「豚小屋で育った」私生児で文盲の男が、軍人としてのし上がり、地位も財産も得ましたが、彼はそれ以上のものを手に入れたい…ペルーの征服者として名を残したいのです。名声は死後に残るもので、彼の老齢がそれを求めたと受け取れます。彼には妻も子もありません。

そしてその人生を通じて、彼はキリスト教には親しみを持っていません。そのため、同行している宣教師たちとは事あるごとに対立します。彼はインカ皇帝が太陽の息子であり、神を自称しているのを知ると、それに惹きつけられます。

 

…太陽を見て、インカ王は「あれが俺の父親だ!俺の父なる太陽だ!」と叫ぶのだ。実に素晴らしいことじゃないか。馬鹿馬鹿しいが、しかし途方もなく素晴らしいことだ。――無意味であるかもしれんが、しかし心惹かれる無意味だ。俺はインカ王が太陽の息子であると聞いたときから、毎晩奴の夢を見る。夢の中では、輝く目をした土人の王が太陽を王冠として頭に戴いている。この夢はなにを表しているのだ?

 

ピサロはアタワルパに直接会う前に、神を自称するインカ皇帝が自分と同じBastard(私生児・庶子。アタワルパは正式な嫡男である兄を殺して王位についた)であることを知ります。そして個人的にアタワルパに興味を抱きます。

スペイン人に会いに来たアタワルパが聖書を投げ捨てたことを口実に、スペイン軍はアタワルパの従者を皆殺しにし、アタワルパ自身を拘束します。そのうえで展開するのが、冒頭でお話しました、ピサロとアタワルパのシーンです。文章でお伝えするのは無理なのを承知のうえで、ちょっとご紹介します。

 

…夕暮れに沈む山々。その映像に、哀調を帯びた野生的な節回しの歌がかぶる。スペイン軍に拘束されたアタワルパが、石造りの神殿のような広い部屋の一隅に腰をおろして歌っている。彼が身につけているのは、たすき掛けにした長いネックレスのような装飾品と、飾りのついた下帯だけである。

部屋の奥には、彼を拘束したピサロ将軍が座っている(『ジョーズ』のロバート・ショウがごま塩頭の老け作りで演じます)二人は最初とげのある会話をするが、やがてアタワルパはピサロが自分と同じBastardであることを知る。彼は冗談めかして

「そういう生まれ方をするのが偉大な人間の証しなのだ

と言い、二人は一緒に笑う。アタワルパは立ち上がり、嬉しそうにピサロに駆け寄ると、肩から掛けていた装飾品をはずし、ピサロにかけて満足そうにうなずく。ピサロは金属の火掻べらに自分の姿を映してつぶやく。

「自分がこんなに立派に見えたのは初めてだ」

アタワルパは突然、エキセントリックなインカのダンスを踊り始める。壁にかけてあった槍をとってさらに激しく、狩りのパントマイムのようなダンスを踊る。あっけにとられているピサロと目を合わせると、アタワルパはピサロに向かって槍を構える。

――緊張感が走る。

ピサロは持っていた火掻べらをゆっくりと心臓の辺りに持ち上げ、アタワルパを静かに見つめる。

アタワルパは槍を窓の外へ放り投げ、パッと床に座って言う。

「さあ、今度はお前が踊れ」

ピサロは笑い出す……

 

…こういうシーンです。見ていてなんとも魅了されてしまいました。もともとクリストファー・プラマーは好きなのですが、彼がほとんどセミヌードといっても良い装飾的なフンドシ姿、しかも背中を覆うような長髪カツラで演じているのに、まず驚きました。プラマーはカナダ出身ですが、わりと英国紳士的なイメージが強かったので、こんな役は想像もできず…そして繰り返すようですが、素晴らしい肉体美も衝撃的でした。ラブシーンをのぞけば、ここまで露出度の高い姿は見たことがなかったので…しかも胸毛も腕毛もすね毛も剃っているので、「生々しさ」はラブシーン以上!(笑)

ピサロを演じているロバート・ショウも、終始静かな野獣といった風情で、それまで見たことがないイメージの役でした。宿敵同士の緊張感から一転して共感でつながる…というだけでも非常においしいシーンなのですが、ほとんど裸のアタワルパが駆け寄って「静かな野獣」にアクセサリーをつけてやる数秒は、二人のフェロモンが画面にむんむんと充満して(?)、もう一緒に映ってるだけでR指定!という感じでした…(^ ^;)

原作・映画を通じて、ほかにもストレートに「おいしい」場面や台詞がてんこ盛りなのですが、紙幅の都合ですべてはご紹介できないので…というか、始めるとキリがありませんので(笑)、ひとつだけ、ピサロの台詞を引用します。

 

俺は愛が何であるかを知らん。しかし、今俺がアタワルパに対して抱いているこの気持ちを踏みにじって、どこに愛があるのかといいたいね。

 

…やはり愛ですか。ごっつぁんです…。(笑)


『②太陽の陵辱』に続く]