カテゴリ【イメージソース/リサーチ/資料関連】


「こんなにも自分を嫌わずにいられたら」/『真夜中のパーティー』(1970)映画と戯曲感想

 

公開当時ゲイムービーのエポックメイキングだったという『真夜中のパーティー』。レンタルで鑑賞しました。ゲイ仲間のバースデーパーティーに事情を知らないストレートの旧友が訪ねてきて……という集団心理劇。もともとは舞台劇で、ニューヨークの1960年代のお話です。じつは以前、大好きなマーク・ゲイティス氏がイギリスでこれの舞台に出演(しかもリアルの「夫」様と共演!)とTwitterで宣伝していて、調べたら映画化作品のコレがあったので、「見たいなー」と思い続けていたのです。そしたら少し前に、運よく近所のツタヤの良品発掘コーナーに入ってきたのでした。

 

さて、設定だけ見るとコメディにもなりそうなお膳立てなんですが……けっこうつらい映画、かつ引き込まれる映画でした。というのは、ゲイであることをメタファーとして、「生きにくさ」を抽象的なレベルで自分に引きつけて見ることができるからです。そういえば一般映画として公開されるタイプのゲイムービーって、こういう「生きづらさへの共感」が大きな要素としてあるなあ……と思いました。この作品は腐女子目線でも萌え要素はほぼゼロですし、60年代風俗が今見るとイタかったり、不愉快なくらい「辛い」ところもあったのですが、なぜか返却するまでに三回見返してしまいました。別の引力があるんです。(音楽にも時代感があって……子供の頃エレクトーンで習ったバート・バカラック『ルック・オブ・ラブ』が使われてたりして、初見なのに妙なノスタルジーも味わいました。(^^))

 

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『ダンケルク』鑑賞といろいろの日

今日はちょうど仕事の納品を終えたタイミングで、見たかった『ダンケルク』をすべり込みで鑑賞してきました。

 

第二次大戦時、フランスのダンケルクの海岸に追い詰められた英軍兵士を、対岸のイギリスから民間船が協力して救出した、という逸話を映画化したもの。この出来事自体はドラマの『刑事フォイル』で初めて知りまして、以来興味がありました。その題材の映画化、これはぜひ見ておかなくちゃ!と思っていたのですが、仕事の他イベントが続いていたのもあり、なかなか時間がとれずとうとう最終日の鑑賞になってしまいました。でも行けてよかったです!(このへんの歴史はイアンの「領域」でもありますし!)偶然ですが、すこし前にご紹介した"Queers"で初々しいゲイのティーンエイジャーを演じていたフィン・ホワイトヘッド君も出ているというので、こちらも楽しみでした。メインキャラは複数ですが、ホワイトヘッドくんの役はその中でもメイン中のメインでありました。

 

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Queers:モノローグで辿る英国のゲイの一世紀

イギリスで男性の同性愛行為が「違法でなくなった」のは1967年のこと。今年はそれから50周年にあたります。この夏にBBCがそれを記念し、"Gay Britania"という企画を展開していました。それに関連して出たのが、ご紹介する"Queers: Eight Monologues"マーク・ゲイティスさん(海外ドラマ『SHERLOCK』制作・脚本・マイクロフト役)が、Twitterでサイン本の宣伝をしていて知りました。Gay Britaniaの一環で放映された独白劇シリーズをまとめた戯曲集で、ゲイティス氏は全体のキュレーションと一本目の執筆を担当しています。

 

 

ゲイティス氏自身オープンなゲイであり、パートナーのイアン・ハラードさんとシビル・パートナーシップ(同性カップルに結婚に準じた権利を認めるイギリスの制度)の関係を結んでから10年近くになるそうで、LGBT関連の運動にもよく参加しておられます。むしろ推進役の一人と言ったほうがいいかもしれません。 

 

…ゲイティス氏のファンでもあり、自分の作品中でも及ばずながらイギリスのゲイのキャラクターを書いているので、このへんのリサーチはライフワーク化しているところ。これは一石二鳥であります。さっそくkindle版無料サンプルをダウンロード。サンプルはゲイティス氏によるイントロダクションだけでしたが、ご自身の少年時代の思い出から今回の企画の意図、八本のエピソードの紹介……と引き込まれてしまい、そのままコミティア会場からkindle版を購入しました。(当日店番しながらサンプルを読んでいました(笑))衝動買いでしたが後悔なしです!(^^)

 

イントロダクションによると――

 

この一世紀のイギリスを舞台にLGBT+の歴史全体を描こう、とは思わなかった

それよりずっとやりたかったことは、ゲイの男性の経験を詳しく掘り下げることだ」

(以下引用部は拙訳)

 

 ――とのこと。そんなわけで一つ一つのエピソードでは、節目になる年に居合わせた個人の体験が語られます。それぞれ約20分の独白劇=一人芝居が全部で八本で、同じキャストで舞台でも上演されたそうです。キャストのうち、少なくとも自分が確認している四人――ベン・ウィショーアラン・カミングイアン・ゲルダー、ラッセル・トーヴィー――は、実生活でもオープンなゲイの俳優さんです。

 

順不同で三本読んだところなんですが、資料という言い訳(?)を忘れて引き込まれています。うちの本をお読みくださっている方にはたぶん琴線に触れる内容だと思うので、少しご紹介してみたいと思います。

 

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家族とは/『キッド――僕と彼氏はいかにして赤ちゃんを授かったか』感想

アメリカのゲイのカップルが養子縁組をするまでのノンフィクション。コミカルなタイトルが表す通り、中の文章もかなりコミカル(でシニカル)。シリアスなネタも下ネタも、カジュアルにツルツル読める文章です。遅読な私が二日で読んでしまいました!(笑)

 

読んだきっかけはもちろんゲイのカップルについてのリサーチだったんですが、それ以上に「なぜ子供がほしいのか?」も興味がありました。自分自身にそういう願望がまったくないこともあって、ゲイのカップルが「わざわざ」子供をほしがるという心理が知りたかったんです。

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『第一次世界大戦はなぜ始まったのか』と『サラエヴォの銃声』

イアンものの肥やしに、相変わらずヨーロッパ近代史(現代史?)を漁っております。そんななかの拾いもの。本と映画のご紹介です。

 

『第一次世界大戦はなぜ始まったのか』

 

まずは『第一次世界世界大戦はなぜ始まったのか』。今の興味とドンピシャのタイトルなので購入しました。これ、買ったあとにアマゾンのレビューを見たら低評価が多めでびっくりしたんですけど、内容が悪いというより、「素材を素材のまんま印刷しちゃった」感じなんですね。なんというか、食べやすい大きさに切るとか、食欲が湧くように盛りつけるとかがされてない。レビューでも編集がやり玉に挙げられてますが、その通りだと思いました。

 

原稿執筆から体裁のデザイン・広告までやらねばならない一人出版社状態の身としては、文章を読みやすく整えるくらいは著者の仕事ではとも思えるのですが、著者がホームページに掲載していた文章をまとめたものらしい、とレビューで指摘されてるので……ここからは想像ですが、もしも「このコンテンツ、本にしませんか?」「いいですよ」程度のやりとりで突貫工事でできた本だとしたら――というのは、奥付を見ると第一次世界大戦100周年にばっちり合わせたタイミングで出ているんですよね――そのマーケティング的な都合で、結果双方がタッチしない、責任と責任の狭間の真空ゾーンができてしまったのだとしたら(こういうことは組織の仕事ではよくあるんですけど)、あまりにも素材が勿体ないし、著者に責任を問うのも酷ですよね。とにかくプレゼンテーション――盛り付け方って大事だな、と思いました。本もお料理と同じですね。

 

なんかへんな切り口から入ってしまいましたが、内容は今まで知らなかったことがいろいろ書いてあるし、レビューの一つで提案されてる通り、しっかり編集作業をしたら魅力的な本になったのではと思います。それと、面白い箇所がじつは話が飛んでるところなんです。いきなり帝国主義時代の日本との比較が挟まってたりするんですけど、そのへんのアナロジーこそがオリジナリティを感じるところだし、「へええ!」と「掴まれる」ところなので。ただ、通史として読もうとしているといきなり話題が変わるので面喰いますね。あと、固有名詞の説明が少ない。ここはやはり編集しだいでしょうね。

 

 

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正統派(?)古本屋さんと「昔の新書」

正統派(?)古本屋さん

 

書きかけのまま、なかなかアップできなかった記事です。(^^;)もう先月のことになってしまいましたが、自宅から歩いて30分くらいの、しばらく(ウン十年くらい?)行っていなかった辺りに散歩に行きました。あまり人けがないところですが、昔おいしくて安価なパンとケーキのお店があったんです。で、それを目的に(笑)。でもショーケースは空だし、店員さんもなく、なんだかごちゃっとしていたので……「閉業準備?」と落胆。…あとで「午前で商品がなくなる人気で、午後に行ったためスッカラカンだった」ことが判明しました。(今度リベンジします!)

 

で、その二、三軒隣に、記憶になかった小さい古本屋さんがありました。なんとなくで入ったのですが、これが掘り出し物のしっかりした「古書店」! 今よくある「リサイクル書」ではありません。「古書」です。神保町の専門店にあるような意味での「古書」。ものすごく敷地が狭いので本は少なかったですが、専門書のジャンルの分け方、その内容など少数ながら本格的で、「古書店の空気」を一瞬吸えた気が。こんなに近くにこういう場があったとは…!と嬉しくなりました。ブックオフ系ならあるんですけど、やはり雰囲気違いますもんね……。で、隅から隅まで見て、ちょうどそのとき探していた古い新書があったので購入。200円ナリ。(写真がそれです。良書なのでのちほどご紹介します♪)レシートが出ませんが、と言われたのでそのまま本だけ頂いて来ました。

 

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意外やテーマは自分探し?/70年代北海油田冒険小説『北海の星』

ただいま、次のイアンものの資料を漁っております。北海に沈んだUFO、という話になる予定なので、北海関係、UFO関係をいろいろと。モチーフとしてがっつり出すかどうかは関係なく、なんとなく心惹かれるものを見て回ってるのですが……いやー楽しい楽しい♪(笑) マイブームになってしまったのが「北海油田」です。なんというか、巨大な工場が海上ににょきり生えているような、姿のSF感がたまらなくて。廃墟萌えにもがっつり対応する魅力です。アマゾンで検索してたら海上油田基地のプラモデル(廃墟じゃないけど)まであって、桁が一つ低かったら買ってました……。(高い(笑))

 

そんな中で、北海油田そのものを舞台にした小説を見つけました!それがこちら、ハモンド・イネス作『北海の星』。シェトランド諸島の西に発見された油井がモチーフなので正確には大西洋なのですが、大きく北海油田の一部と括られるようです。

 

これ、書かれたのは1970年代。主人公が労働争議に関わってたり、「コミュニスト」や「アナーキスト」などの用語が飛び交って素敵な時代感があります。北海油田がブイブイ言わせてた(この言い方ももう死語?)のがこの時代なので、当時の「ホットなモチーフ」で書かれた海洋冒険小説、という感じです。イギリスのアマゾンで感想を見てみたら、今は失業補償制度があるから、労働争議にここまで入れ込む気持ちがわからない……というのがあって。なるほどなー、本国でも時代が変わるとこういうものなんだな……と興味深かったです。日本はその点まだまだなので、かえって感情移入はしやすいかもです。(ただ、過激な行動はやはり受け入れがたいかも)

 

読んで「あれっ」と思ったのが……この主人公、冒険小説の主役らしくないんです。

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新刊無料配信準備中+E. H. カーとハエ取り壷

新刊無料配信準備中

 

さて、GWのイベントシーズンが近づいてきました。準備中の皆様おつかれさまです! 今回はスパコミ等の同人誌イベントに申し込んでいないので留守番なのですが、先日のJ庭で無料配布させていただいた歴史ライターイアン・ワージングシリーズの短編を、kindleで無料配信しようと思っています。シリーズ三作目ということになります。三つになると、なんかほんとにシリーズっぽくなってきた気がします!(笑)

 

二作目のHistory: 低体温男子イアン・ワージングのハロウィーンはその後有料でちらほらお読みいただいていて(ありがとうございます!)、今後また無料化するのは有料で読んでくださった方に申し訳ないので、キャンペーン用の本を新刊に移行するつもりで現在kindle版制作中です。

 

 ←表紙は今のところこんな感じです。色具合等手を加えるかもしれませんが。

 

(kindleの無料配信は、うちのような規模の発行者は今のところ三ヶ月にい五日しかできません。うちの本は無料化できるものとできないものがあるのですが、できるものはリリース時に無料にし、その後有料デフォルトという流れを想定しています。いつもチェックして下さってる方々にはなるべくお得に お届けできるように、と願っております☆m(_ _)m)

 

『History…』がシリアス寄りだったので、今回は一作目のネガティヴ・ケイパビリティ: 絶食系男子イアン・ワージングのレイライン紀行の雰囲気に近いものにしようと、コミカル強めになっています。目標(?)にしている「BL版寅さん」の要素(主人公がけっこう惚れっぽい)を前面に出し、かつ初めてのゴーストライターの仕事をするという内容です。間に合えばGW中に、間に合わなければそのあとの週末あたりをめやすに無料配信をしようと思っています。ぜひ読んでやって下さい。

 

kindleをお持ちでない方は無料アプリでお読みいただけます。こちらからぜひどうぞ。

 

kindle無料アプリ

 

 

E. H. カーとハエとり壷

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連載小説『交霊航路:僕と彼女とドイル文書は永遠に』/『十二夜』と『すべての道はローマへ』のこと

遅ればせながら、先月から連載を始めた小説『交霊航路:僕と彼女とドイル文書は永遠に』をご紹介させていただきます。すでにプロローグ4パートと第一章の最初の2パートが公開になっています。お読みくださっているみなさま、ありがとうございます! 長編を分割しての連続掲載で、まだ設定が出揃ったばかりなので、これからの方もゆっくりおつきあいくださいませ。ここでは、影響を受けた映画などまじえてご紹介してみたいと思います。

 

・・・この作品は2006年に同人誌で発行し、一部の方に(笑)ご好評をいただいた長編『交霊航路』を改稿したものです。(昔同人誌でお読みくださった方も、もしかしたらここをお読みいただいているかもしれません。いただいたご感想など心に残っておりまして、改稿の励みとなりました。本当にありがとうございました)

昨年改稿後、電撃小説大賞さんに違うタイトルで投稿させていただき、ありがたくも一次通過で評をお送りいただきました。(選評個人ブログでご紹介しております。選評スタイルなどご興味ある方はどうぞ)同人誌発表済みのSF系長編を投稿できる場が他になく、でも一度は外部の評価を見てみたかったので、少し場違いな作品だとは思いつつ投稿させていただきました。そんな作品にもかかわらず、大変ご丁寧な評を賜って感謝に堪えません。この場を借りて同賞の選考者のみなさまにお礼を申し上げます。とても参考になりました。

  

今回はウェブ用なので、細部に少し手を加えています。読み直すたびにいじりたくなっちゃうんですよね(笑)。

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リサーチから:おすすめオンライン無料講座FutureLearn

いちおうこのブログは作品や創作に関係したことを書いていくつもりなので、今回は準備中の作品のリサーチに(ゆるく)関連して…先週から始めたFutureLearnという英語の無料オンライン講座が予想外に(?)とてもいいので、おすすめを兼ねて、以下の自分がとったコースなどをご紹介します。それぞれ数週間ずつのコースです。

 

・水中考古学

・英語でのアカデミック・ライティング(非英語話者向け)

・英語とイギリスカルチャー

・その他のコース一覧

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